
最低賃金が10月1日から変わりましたね。
全国平均1,055円。2020年代には1,500円を目指すとも言われていますね。
私が高校生でアルバイトした時の時給は、700円くらいだったんじゃないかなあ。時代の変化と速度は凄まじいですが、今日は不変的な話をしたいと思います。
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橘 玲さんの本『バカと無知』の中で、こんな実験が紹介されていました。
5歳から10歳の子どもたちが、今後知り合う予定のない子どもと、おもちゃの引換券を分配します。
「どちらも引換券を1枚ずつもらえる」と「自分が2枚で相手が3枚もらえる」を選択できます。
当然、引換券1枚より、2枚もらえる方が有利ですが、多くの子どもが引換券しかもらえない1対1の分配をえらびました。
子どもにとっての重要なことは、絶対的な損得ではなく、相対的な損得であることがわかります。
この実験を読んだとき、「え、そんなことある?2枚もらった方が得じゃんか。」と思い、息子と娘にもこの実験をやってみました。
結果は、
息子「2枚もらう方がいいー!あたる可能性増える」
娘「1枚ずつ、そっちの方が平等だから」
なるほどなぁ。
まさに普段の彼らの性格が反映されているなと思う回答でもあります。
本の中では、
有利な方を選択するのではなく、相対的な損得で選択することは、子どもたちの認知能力が発達していないからではなく、おそらくは遺伝的にプログラミングされた本性なのだ
と書かれていました。
一定数のコミュニティで、地位や性愛をめぐり競争する上では、絶対的な利益より、相手より優位に立てる相対的な得が優先されるのは、自然なことです。
この実験は子供を対象にされていましたが、大人になったらどうだろうか。
そういえば、私も最近嫉妬を感じたり、悔しく思ったりする機会があったなと思い返しました。
ただ、それは絶対的な視点ではなく、他者と比較し、生じた ー相対的なー ものではないかなと思います。
最近のタイムリーな例で言えば、最低賃金についてはどうでしょうか。
会社の中で、最低賃金によって給与が上がる人って、新人の人が多いですよね。
今回の兵庫県では、1,001円から1,052円への改定です。51円UPです。
最低賃金を下回る場合は、法律に沿って、賃金を上げないといけません。
多くの会社さんで悩まれるのが、最低賃金には引っかからないけれど、先輩方の時給です。
新人さんの時給を、1,001円から1,052円にしたのだから、元々1,050円で働いていた先輩も給与を上げないと、おかしなことになりますよね。
ただ、同じように51円昇給し、先輩を1,101円にしたらどうでしょう。
そのまた先輩・・・となっていき、その賃金幅で全員を昇給していたら、事業運営に支障をきたす場合があります。
なので、
◆新人は1,001円→1,052円(51円UP)
◆先輩は1,050円→1,080円(30円UP)
ということもよく生じます。
そこで先輩からは、「なぜ新人が50円UPしているのに、私が30円なのよ」と内外の声が発せられることも度々です。賃金の昇給さえなければ、発生しえなかった不満です。
はたから見れば、「そもそも、最低賃金の改定さえなければ、そのタイミングで先輩の賃金が改定することもないかもしれないので、むしろラッキーじゃないか。」と思ってしまいます。
ただ、そうはいかないのが人間心理なのだと思います。
大人になるにつれ、周囲の環境に応じて、言葉にして自分自身の不平不満を発さなくなるかもしれません。
けれど、それはその感情がなくなっているのではなく、発していないだけで、心にはあるのだなと思います。
最低賃金を例にとりましたが、会社組織を考えたときには、特に優劣が付くタイミングでは、その感情を考慮する必要があると思っています。
大切なことは、
・相対的損得感情を理解する(人間古来から備わっている感情です。人間らしい。とむしろ憂うことなく。)
・相対的損得勘定を認知した上で、不平等と思われる前に対策を打つ(先に伝えたら説明、後から伝えたら言い訳理論。モヤモヤとされる前に伝えてしまおう。)
変わりゆく時代の中で、人の感情はどの時代も変わらないものがあるのだなと思います。
10月は私自身、いろんな感情が交差した月間でした。
正の心の動きも、負の心の動きも動いた数量だけを考えると、共に力になります。(+3動こうが、ー3動こうが、3動いたことには変わりないですよね。)
あとは、この動きをパワーに変えて、実りあるものにしていけるよう、鼓舞しながら励んでいきたいなと思います。